対話型鑑賞におけるナビゲーターの役割とは?〜思考を促す4つの問いかけ~

ナビゲーターは教えない先生!

皆さんは美術館や博物館に行った時、何を観ているでしょうか?

おそらく、作品の下に貼られた文字、

つまり作者名やタイトルなどが書かれたキャプションを見るのではないでしょうか?

 

美術館に行き慣れていないほとんどの人は、

作品を流し見しながら通り過ぎる人がほとんどかもしれませんね。

「興味がないわけではない…しかし、何が楽しいのかわからない!」

と言う人が多いのではないでしょうか??

 

もともと、そういう状況に疑問を持ったニューヨーク近代美術館(MoMA)の教育部長が開発したものが、

VTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー)、つまり対話型美術鑑賞なのです。

作品の情報や、作者の言葉ばかり見るのであれば、そもそもWEBサイトでも見れちゃいますからね。

 

対話型鑑賞においてナビゲーターは、作品の情報や知識を「教えない」役割をになっています。

 

思考を促すナビゲーターの4つの問いかけ

対話型鑑賞においてナビゲーターは、鑑賞者がより深い学びを体験してもらうための活油剤です。

ナビゲーターは、「美術の歴史や作者の生い立ちを教える人」ではなく、

見る人の関心や好奇心を掻き立てるために4つの問いを投げかけ、

アート作品を鑑賞者自身の目で見れる様に案内する人です。

 

対話型鑑賞において、参加者の考えを引き出すには4つの問いかけがとても重要です。

ナビゲーターの問いかけは、思考と興味を促す道しるべとなります。

 

  1. 作品の中で、見つけたこと、気づいたこと、考えたこと、疑問でもなんでも良いので話していきましょう。
  2. どこからそう思いましたか?
  3. 他にはありますか?
  4. そこからどう思う?

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

作品の中で、見つけたこと、気づいたこと、考えたこと、疑問でもなんでも良いので話していきましょう。

作品の感想を話す、と言うのに慣れている人は少ないのではないでしょうか?

「人前で話す」と言う条件であれば、そのハードルはものすごく高くなっているはずです。

この質問によって、参加者は「どの扉から入っても良いいんだよ!」と言う印象を持つことができるのです。

 

「ここは、ヨーロッパかな?」と、”疑問の扉”から入っても良いし、

「この人は画家だ!」と、”発見の扉”から入っても良い

「なんかこの絵は、気持ちが悪い!」と、”印象の扉”から入っても良いのです。

 

まずは、ドアをノックしてみんなで覗いてみよう!

その部屋から何が出てくるかは、誰にもわかりません。

 

ちなみに「対話」と言うものは、価値観の違う人たちが理解し合うためのコミュニケーション手段です。

答えが限定された問いではなく、「開かれた問い」を投げかけることは、とても重要です。

 

どこからそう思いましたか?

一見、なんてことのない質問の様ですが、

この問いかけは、対話型鑑賞の中でもとても特徴的な問いかけです。

 

「あの雲、キリンに見える!」と言ってきたら、

「どこから?」ではなく「どうして?」とか「なんで?」と聞き返してしまうのではないでしょうか。

 

この「WHY?」の質問は発言を滞らせてしまう問いです。

「なぜ?」と聞かれると、自分の心情を答えなければいけないのかな?と感じさせてしまします。

「なぜって言われても…僕はキリンが好きだからかな…?」と考え込んでしまう様な質問です。

 

そうではなく「どこから?」と言う問いかけは、

絵の中から「みんなが見ている事実」に基づいて根拠を述べることができます。

そうすると、子供たちもとても答えやすく、発言も出しやすくになります。

「あの雲、キリンに見える!」

「どこからそう思うの?」

「雲の上の方が、長く伸びていて首みたいに見える!」

 

論理的に考える様に、自然と導いていくことができます。

 

他に見つけたこと、考えたことはなかな?

一人の意見から、別の感想や見方を探してみます。

対話において人と違う意見は、とても歓迎されるものです。

人によっては「否定された…」と感じてしまうこともありますが、

対話型鑑賞においては、人と違う意見がたくさん出ることで、新しい興味や関心が湧き出てくるものです。

 

「長い首の様な形があるから、キリンに見える!」

「僕は、キリンではなくば外部分が象に見えるなぁ!」

 

アート作品のいいところは、「正しい答え」がないところです。

「他にある?」と言う問いは、すでに出た意見に賛同するのではなく、

人とは違う角度から見てみよう!と自然に導くことができます。

 

そのことについてどう思う?

この問いは、一歩鑑賞を一歩深めるための問いかけになります。

絵の中の事実から、仮説を立てたり、描かれていないことに想像を巡らせる様に導きます。

 

「あの人、怒ってるんじゃないかな?」

「どこからそう思う?」

「眉間にシワが寄って、睨んでいる様に見える!」

「そこのことについて、どう思う?」

「きっと目線の先に、大嫌いな人を見つけたんじゃないかな?」

 

一つの事実から、仮説を立てると言う力は、そう簡単に身につけることはできません。

「想像」と「空想や妄想」は、別物です。

「そこからどう思う?」は観察から自分なりの物事の観方を育てるための問いです。

 

安心して発言できる場を作る

ナビゲーターは、参加者の思考を促すだけではなく、

安心して自分の意見を発言できるための”場作り役”でもあります。

現代社会では、安心して発言する場所はあまりにも少ないかもしれません。

家庭でも親に怒られない様に、学校では答えを間違わない様に、会社に入っても上司に差変わらない様に…

そんな社会が生きづらいと感じる人はたくさんいるはずです。

 

ナビゲーターの問いかけは、「開かれた問い」です。

どんな小さな呟きも、ナビゲーターを通じてみんなと共有することで、

「自分の発言がみんなの新しい発見につながる」そう思いながら鑑賞できる様になるはずです。

 

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