子供の語彙力が身に付く!対話型アート鑑賞のすすめ
年々低下する日本の「読解力」
普段身近な人と話す時「ヤバい」「みたいな」「超…」という言葉を耳にしない日はありません。
言葉を丁寧に話す習慣のない人は、擬態語・擬音語も多用することで、ある程度伝わった気持ちになってしまうのではないでしょうか。
日本の子どもたちは、理数分野では世界でもトップレベルと言われますが、 「読解力」では年々低下しています。
経済協力開発機構(OECD)が、一昨年行った国際学習到達度調査(PISA)でも、その様な結果が出ました。
この読解力の低下の原因には、やはり「語彙力」が低下したことも一つの要因でしょう。
新学習指導要領でも「語彙指導の改善・充実」という目標が設定され、子どもたちの国語力を重要視する動きがみられます。
使える語彙が少ないと、自分の気持ちや考えを相手に伝えたいと思う場面でもうまく表現できず、
人とのコミュニケーションにおいて大きな弊害となってしまいます。
それだけではなく、自分に必要な情報を得る機会も失いかねません。
今回は、子どもの語彙力が自然と増え、自分の気持ちを上手に伝える力が向上する「対話型アート鑑賞」についてご紹介をします。
強要しても語彙力は身につかない!
語彙力や読解力の低下は、テレビやスマホの普及が原因、という方もいますが、
一番は家庭の会話量に直結します。
家庭環境に「たくさん話す機会」があれば、日常の中で子供は言葉を自然に身につけていきますし、
相手のことを考えながら話す癖も自然と身ついている傾向が強いです。
親との会話量が少なければ、子供はそれだけ言葉に触れる経験も少なくなり語彙も増えていきません。
だからといって、子どもの語彙力を無理に育てようとすると、たくさん本を読ませたりしがちですが、
それは、表面的な語彙を頭に詰め込ませているだけです。
「言葉」は知っているけど、その言葉の本質や使い道を知らない状態で、
「ただ知っている」という状態では、なんの意味もありませんよね。
語彙は自分の気持ちを伝えたり他人の考えを理解しようとするための道具です。
人とのコミュニケーションの中で「この気持ちをなんて表現するんだろう?」とか
「この状態を理解してもらうにはどの言葉が伝わるんだろうか?」という気持ちがあるからこそ
語彙力を身につけていくのが、最も自然な学びとなります。
対話型鑑賞で語彙力が自然に向上する!
対話型鑑賞は、一つのアート作品をみんなで見て「みる」「考える」「話す」「聴く」を繰り返す鑑賞法です。
ナビゲーターは、鑑賞者の発言に対する問いかけによって、論理的思考だけではなく、表現する力や語彙力も育てる役目も担っています。
パラフレーズ=言い換え
対話型鑑賞のつなぎ役であるナビゲーターは、参加者の言葉を「パラフレーズ」という方法を使って、
その場にいる全員で言葉を共有します。パラフレーズとは「言い換え」という意味です。
発言者が、「なんか日本の踊りみたい!」と言ったら
ナビゲーターは「〇〇さんは、この絵が日本舞踊に見えたんだね!」という様に、
子どもたちに新しい言葉を与えるのです。
そうすると発言者は、「自分の言葉を受け取ってもらえた安心感」と、
「なんだか自分が賢い事を言った様な気持ち」が芽生えます。
ナビゲーターは、ものわかりの悪い先生役!
発言者は言葉によってみんなと絵を共有しなければなりません。
「あそこの赤いところ!」と指をさしても、全員には共有されませんよね。
ナビゲーターは、簡単に「ここね!」と言ったりせず、わざとわからないフリをして、言葉を引き出します。
鑑賞者:「あそこの赤いやつは、きっと風船だ!」
参加者:「あそこってどこのことかな?」
鑑賞者:「絵の右上の部分!」
参加者:「右上はどの部分だろう?」(わざと間違う)
鑑賞者:「右上の一番大きい雲の隣にある赤い丸のこと!」
一見意地悪の様にも見えてしまいますね。笑
しかし、言葉を育てるには、「察しのいい大人」はある意味弊害になってしまうこともあります。
物わかりのいい先生や親がたくさんいると子どもの「伝えたい!」という気持ちをつみ取ってしまうのです。
なんとか自分の中に眠っている言語を一生懸命引き出して
伝えられた経験が語彙力を自然と育てる土台となっていきます。
表現する力は人と繋がる力
一見無口に思える子どもでも、伝えたいことは山ほどあるはずです。
学校で褒められたことや、友達と喧嘩して嫌になった気持ち、好きな人のことも本当は全部聞いてもらいたいと思っています。
受験や出世のために語彙力をつけさせるのではなく、
親子の会話を通して、子供の伝えたい!という気持ちを育てていけば、
子どもは勝手に表現する力を身につけていってくれるのではないでしょうか。